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なぜカスタマーサクセスは失敗するケースが多いのか?考えてみた

アディッシュでカスタマーサクセスのコンサルタントをしている藤木奈美です。
コンサルタントという職業柄「上手く行かなくて困っている」というご相談が多く寄せられます。そんな立場だからこそ失敗に対する共通点も見えてきやすいため、この経験をシェアしようと思い立ちました。

そもそも成功に再現性があるのであれば、ベンチャー企業の5年後の生存率は15%なんて言われません。しかし失敗に関しては再現性が一定あるのではないかと思います。この記事ではよくある失敗事例6つに対し、私なりの解決策も記載しておりますので、参考程度に読んで頂ければ嬉しいです。


日本にカスタマーサクセスのナレッジが少ない

カスタマーサクセス従事者にとって赤本・青本はとても有名だと思いますが、赤本に関しては2019年に出版されました。この記事を書いている2023年からするとまだ4年しか経っていないんです。

つまり何が言いたいかというと、カスタマーサクセスが注目され始めたのは最近のことであり、入手できる情報量も多くないという課題があります。日本のSaaSは米国から5年〜10年遅れで成長するとも言われますが、例えば英語で検索すれば多くの事例がヒットする一方、日本語だと表面的な情報しか入手できないことが多くあります。
(ちなみにこの場合の解決方法としては、英語で検索して翻訳にかけるなどがオススメです。特にDeepLという翻訳ツールは非常に精度が高く、日本の文献を読んでいるかのような使い心地なのでオススメです。)

冒頭で成功に再現性はないと書きましたが、その中でいかに精度の高い仮説を立てて実行していくか。そのヒントとして先行事例は有用ですが、得られる情報が少なければ成功確率も下がってしまいます。

この場合の代替手段としてオススメなのは翻訳ツールを使う、カスタマーサクセス従事者のコミュニティに属する、弊社のようなカスタマーサクセス専門コンサルティング会社と一緒に取り組むなどです。翻訳ツールは一番手軽ですので、まずは一度試してみて下さい。

経験者が少なく、未経験者が頑張るしかない

これには2つの背景があると思います。

1つ目は、上記の通りカスタマーサクセスが注目され始めたのは数年前の出来事であり、経験者が少ないという課題です。一方でSaaS系企業は年々増え続けているため需要と供給に乖離が生まれ、経験者の市場価値はどんどん上がっています。まだまだ小さいスタートアップがそのような人材を雇う余裕もなく、多くはメガベンチャーに取られてしまうのが実態です。私のクライアントでもカスタマーサクセスの求人を出している会社は多くおられましたが、一向に経験者からの応募がなく、最終的には諦めて「未経験者OK」に変更せざるを得ないケースが多くありました。

2つ目は、カスタマーサクセスにいきなり投資しようと考える会社が少ないという課題です。最近のスタートアップでは代表が「カスタマーサクセスは重要だ」と考え、トップダウンで人員確保が進む会社も増えてきましたが、やはり全体的に見るとどうしても新規営業の方に投資する会社の方が多い印象です。
その結果、営業がカスタマーサクセスを兼任するという形に着地し、未経験者が空いている時間でカスタマーサクセスを担うことになります。当然このような構造では成果を出すことも難しく、

カスタマーサクセスが評価されない

投資部門と認識されず人手不足

解約率が下がらない

MRRが一向に積み上がらない

事業の失敗

という悪循環に陥ってしまいます。

これを解消するにはいち早く結果を出す、もしくはカスタマーサクセスの重要性を社内に理解してもらうことで、十分なリソースを確保することが重要だと考えますが、そこが難しいですよね。宣伝になって申し訳ないですが、弊社のようなコンサルティング会社を導入し、加速度を上げてまずは成果を出す、に注力するというのは有効な解決策のように思います。

解約対策ばかりに注力してしまう

顧客は
導入期>活用期>更新/拡大期>解約期
というライフサイクルを辿りますが、よくある失敗は解約期ばかりに注目してしまうことです。

カスタマーサクセスのKPIとして「解約率〜%」を上から求められることは多いようです。そうすると担当者は、まず解約リスクのありそうな顧客を優先的にフォローするようになります。
例えば数ヶ月後に更新を控えている顧客や、ログイン頻度の低い顧客に対して片っ端からヒアリングを行うなどです。
しかし、大半のケースではもうその時点で解約の意思決定は済んでいます。正直に「解約する予定です」なんて言えば営業をかけられるため、直前までは前向きな返事をして、いざ更新になった際に急に解約、なんてこともあり得るでしょう。

本質的に解約対策を行うには、サービスが顧客に対して価値を提供し続けている状態を作りにいくことに尽きます。つまり、導入期から更新/拡大期にかけての顧客体験を最大化するということです。まず手をつけるのであれば、顧客が特につまずきやすいポイントと言われる「オンボーディング」から着手してみて下さい。考えてみれば当たり前の話ですが、使い方やメリットの分からない顧客が継続する訳がありません。

繰り返しになりますが、「解約対策だ!」といって末期患者のケアをするのではなく、健康寿命を伸ばす方向に注力することが重要になります。「解約率」は結果論でしかないので、それよりも「オンボーディング成功社数」などをチーム目標に設定する方が本質的だと思います。

オンボーディングが上手くいかない

複雑なサービスであればあるほどオンボーディングの難易度も上がります。そのため、成功率を上げるために

リーダーがオンボーディングステップを見える化する

CSMがそれに従ってToDoリストをこなしていく

というケースがよくあります。特に組織が大きくなると分業化が進み、CSMは毎日ひたすらToDoをこなしているだけ、なんてこともあります。

しかしこのままでは上手くいきません。なぜなら顧客の課題に向き合っている状態とは言えず、ひたすらToDoに向き合い、操作説明などを繰り返している状態に陥るためです。
想像して頂きたいのですが、ひたすら説明を聞いているだけでは眠くなってきませんか?反対に、なぜ今それが必要なのかという理由が紐づいており、それに対する解決策の説明を聞いている時はモチベーションが上がると思います。これを実現するためには1人1人の顧客が抱えている課題への理解を深め、それを一緒に達成する当事者としてオンボーディングを行なっていくことが重要です。

オンボーディングステップを見える化すること自体は悪くないのですが、なんのためにそれを行うのかという課題意識が持てなくなり、単なる作業と化してしまう事態になるのは避けましょう。
最悪の場合、「向こうも忙しそうだし、こっちでできる作業は自分でやった方が早いのでやってしまおう」という思考になってしまいます。クライアントからすると「助かった」となりますし、CSMからしても「早く終わってよかった」となりがちですが、これは顧客の当事者意識を奪い自立を阻害する行為でしかありません。

適切な振り返りができていないので、顧客に対する解像度を上げられていない

「解約率を下げたいのですが、上手くいかなくて...」これはよくある相談なのですが、「顧客の解約要因について、今把握している要因を詳しく教えて頂けますか?」と聞いても「多分〜〜だと思うんですけどね...」と、具体的に答えられない企業が意外と多いです。
つまり仮説を仮説のままにして施策を回している状態です。これでは施策が適していなかったのか、それとも前提条件となる仮説が間違っていたのか分からず、適切な振り返りができません。勿論改善の精度も下がります。この場合の解決策としては

・仮説と事実を分けて考えること
・定期的にユーザーインタビューを通して仮説を事実に変えていくこと

が重要です。

この場合のユーザーインタビューは、Googleフォームでアンケートを送付するというシンプルなものでなく、N1分析のような1人の顧客に対してじっくり深掘りするような形式の方が適しています。N1分析であれば自社の持っている仮説に対して直接確認を行うこともできますし、それが正しかった場合、どのように改善されるのが適切かなどもヒアリングできます。N1分析について詳しく知りたい方はこちらの本がオススメです。

また、弊社にご相談頂くことも可能です。

サービスが市場の需要にマッチしていない

シード・アーリー期のSaaSでよくあるのが、サービスがPMFしておらず、まだ模索しながら進んでいる状態です。「どうしても3ヶ月過ぎたらチャーンしてしまう」「買い切りモデルになってしまっている」など、顧客が継続する理由について企業側も悩んでいる状態です。とはいえMRRを積み上げていきたいのでカスタマーサクセスチームが存在するのですが、担当者の皆さんは結果を出せず苦労しています。

このような場合、カスタマーサクセスとして重要な使命があります。それは顧客のリアルな声を社内に届けることです。カスタマーサクセスというポジションはサービスを利用してくれた顧客に最も近いポジションであり、日々接点を持つ中で様々な声に触れられます。それらの声をカスタマーサクセス内にだけ留めるのではなく、広く社内にフィードバックしていきましょう。

例えば
・定期的に顧客の声をレポーティングし、社内に展開する
・Slackのチャンネルを作成し、随時発信する
 (→ネガティブな意見は全体の士気を下げるリスクもありますので、ポジティブな意見のみ流している企業もあります。やはりポジティブな意見は嬉しいもので、多くのスタンプが集まり盛り上がります。)

顧客からのフィードバックはビジネスモデルやシステム開発の優先度を左右する重要なヒントとなりますので、積極的に発信することで、どんどんリアルな意見をサービスに取り入れ成長を加速させていきましょう。

最後に伝えたいこと

ここだけの話ですが、上手くいっている会社の方が少ないのではないかなぁと想像します!皆さん上手く行かない中、四苦八苦しながら頑張っています!(「赤本・青本片手に頑張っている」というのはとてもあるあるです!)

構造上、未経験者が未知の業務を手探りで行なっている状況にならざるを得ないので、カスタマーサクセスというポジションはとても大変だと思います。そんな中、なかなか評価もされなければ非常に苦しいですよね。まずはそんな大変なポジションで頑張っているご自身を労って頂きたいというのと、どの会社さんも同じように上手く行かない中頑張っているということを心の片隅に置いておいてほしいです。

少しでも結果が出れば凄いことですし、大いに自信を持つべきことだと思います。
この記事が少しでも課題解決に繋がり、カスタマーサクセス従事者の方々の自信に繋がることを祈っています。

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