SNS投稿をモニタリングして11年! ユーザー低年齢化のリスクと対策、健全なコミュニティ形成の鍵は?
adish サービスデリバリー事業部 OMS プロダクトオーナー 清野翔平さんにインタビュー!サービス運営統括としてサービスの品質にこだわる姿勢や、約11年に及ぶSNS投稿監視の経験から見た昨今のSNS投稿内容の変化、低年齢化のリスクと対策について語っていただきました。
投稿監視スタッフ50名を統括するプロダクトオーナー
吉澤:サービスデリバリー事業部OMSの業務内容と清野さんの仕事内容を教えてください。
清野:サービスデリバリー事業部OMSでは、SNSや企業のオウンドメディアへの投稿監視、会員制サービスにおける本人確認の代行業務、マッチングアプリや動画の監視といったインターネットのモニタリング業務を行なっています。一つのチームで複数の案件を担当する点が特徴です。僕は、プロダクトオーナーとしてプロダクトの運用統括をしています。仙台と福岡にいる約50名のスタッフ管理のほか、売上げ管理、既存顧客とのコミュニケーションやサービスの提案からセールスの皆さんが獲得してくる新規業務の相談や見積もりの提示なども行っています。
吉澤:スタッフが多いと大変ですね。サービスの品質を維持するために気をつけていることはありますか。
清野:品質の維持は永遠の課題ですね。クオリティ向上の施策は止めないように心がけています。スタンダートな施策としては、「モニタリング」といって、オペレーターが対応したものを別のスタッフが再チェックしてフィードバックをする仕組みを採用しています。
最近では、運用スタッフの成長を促す仕組みやキャリアパスにも意識を向けています。
吉澤:監視業務の中で、やりがいを感じる時ははいつですか。
清野:既存のメディアやサービスの監視業務の受託だけではなく、クライアント様が新規サービスをリリースする前の段階で当社にご相談をいただく時です。これまでの経験をもとに、監視しやすい体制の提案やサービスに入れた方が良い機能の提案ができるので、とても面白いです。
吉澤:なるほど。清野さんのこれまでのキャリアを教えてください。
清野:2010年に当時のガイアックス社にアルバイトとして入社して、現在11年目です。
ガイアックス社が大手SNSの投稿監視を受託するタイミングで、仙台センターの立ち上げスタッフとして参加しました。アルバイトリーダーを経て2016年に契約社員、2017年に正社員になりました。2019年に仙台拠点のリーダーという立ち位置になり、2020年には運用統括を担わさせていただきました。
吉澤:大先輩じゃないですか! 大手SNSの投稿監視をしていた2010年と現在で、当社のサービスや世の中の状況はどう変わりましたか。
清野:当時に比べてWebサービスが増えていることもあり、弊社が対応できるクライアントの種類や数・サービスの領域も広がっています。当時のような大きなクライアントだけではなく、さまざまなクライアントとしっかり繋がりを持っていくという意識は昔より強くなっています。
SNSの変化ーネットとリアルの境目が曖昧になっている
吉澤:当時のSNSの投稿と現在のSNSを比較して、何か違いはありますか。
清野:昔と比べると、ネットとリアルの境目が曖昧になっています。
例えば、国内のSNS市場で、mixi全盛期はSNSで実名やメールアドレス、電話番号を公開することに抵抗を感じる人が多く、ネットとリアルは全く別物と捉えられていました。
しかしFacebookの登場によりネット上での実名利用が市民権を得ました。
ネットとリアルがつながることに違和感がなくなったことで、投稿の内容に違いが出てきました。例えば、「実際に会いませんか」といった投稿は今では珍しくなくなっています。昔だったら「実際に会おうとか、やばいやつだよね」という感覚があったけど、今はそこまでではありませんよね。
吉澤:確かに。僕もmixi世代でペンネームを使っていたので、Facebookの実名制は驚きました。ネットとリアルの境目が取っ払われていく。これは良い面も悪い面もあると思いますが、実際の監視内容に変化はありますか。
清野:そうですね。昔と変わらず、面識のない異性と出会おうとする行為は禁止事項として定めている事業者様が多いです。しかし一方で、マッチングアプリのような「異性と出会うためのWebサービス」も増えています。監視対象のサービスによって判断基準が大きく異なるため、その辺の感覚のアップデートや住み分けが必要になっています。
吉澤:業務がより細分化し複雑になっているということですね。
清野:そうですね。チームの課題の一つです。
SNSユーザー低年齢化のリスクと対処法
吉澤:清野さんから見て、ネット上のコミニュティは良い方向に向かっていますか。
清野:社会全体で見たら、悪い方向には行ってないと思います。ただ一方で、小学生でもスマホを持っているのが当たり前という状況で、低年齢化のリスクは感じています。
吉澤:どの事業者様もそこは気をつけている感じですか。
清野:はい。特に18才未満のユーザーには、青少年保護の観点から監視基準を厳しくしているケースも多いです。
吉澤:なるほど。ネットリテラシーの問題にもつながると思いますが、インターネットに関する教育について、清野さんのお考えをお聞かせください。
清野:今はスマホのアプリやゲームが進化していて、知らない人と通話しながらプレイできるゲームがたくさんあります。ゲーム内で「LINE教えてよ」という人に対して「そういうのはダメって言われてる」と、きちんと断ることができる低年齢の子どもが意外と多い印象です。
学校や家庭できちんとインターネットリテラシーを教わっているのかなと。それはとても大切ですし、実際に効果があるんだろうなと感じています。
吉澤:現在、SG事業部(スクールガーディアン)が頑張っているところですね。前回のインタビューで石井さんと同じ話題になりました。SG事業部との連携の話になりますね。何かアイディアはありますか。
清野:スクールガーディアンでやっていることは、個人的にとても大切だと感じています。学校に働きかけができる点が、受託側となるサービスデリバリー事業部とは大きく異なります。我々監視側の知見はSG側も把握しているはずなので、どのように連携ができるか模索中です。
ネットリテラシー向上の鍵を握るのはYouTuber?
清野:アディッシュでは、ネットパトロールをしており、見守るだけでなくスタッフが学校に赴いて「ネットリテラシー講演」を行なっています。ただ、インターネット上でなにか困った経験がある子には響きますが、そうではない子にはなかなか届きません。
きっと我々のような大人よりも、人気のYouTuberやゲーム実況者、学校の憧れの先輩や部活で活躍しているかっこいい子、といった身近な人が発信することでもっと浸透するのではないかと思っています。
吉澤:クラスのリーダー的な存在な子とか。絶大な影響力がありますよね。
清野:そういう仕組みができれば、もっとネットリテラシーが浸透するのではと感じています。学校のポスター掲示だけではなく、「あの人が言ってるんだから」という雰囲気を作ることが大切だと思います。
吉澤:それでいうと、ヒカキンはすごいですよね。
誰もが知るトップYouTuberで「子どもに見られている」という意識を持ってクリーンなことをやっている。例えば、大きな震災があればすぐに寄付をする。偉大な方ですよね。
清野:子ども達はそれを見ているので、YouTuberという職業はここ数年人気が続いていますよね。
吉澤:YouTuberの影響力は大きいですよね。
清野:女性や子どもに関していうと、有名人のインスタグラムのストーリーズでは「その服はどこのですか」「後ろにある花瓶はどこのですか」「その食べ物はなんですか」という質問がずっと続きます。「その人が持っているから買いたくなる」のだと思います。非常に影響力が大きいです。
吉澤:特に子ども達は影響を受けやすいからこそ、ネット上の有名人が今後のネットリテラシーを左右するのかもしれません。
清野:逆に、子どもが配信する側になる場合も、ネットリテラシーに気をつけて欲しいと感じます。動画に良くないコメントが投稿されることもありますし、コメントで言われたことの意義を理解しないまま実行するなど、実際に我々がそのサービスの監視をしていて「これは良くないな」と感じることもまだまだ多いです。
吉澤:SNSの監視を通して、常にネットリテラシーの問題を感じているわけですね。
それをなんとかしないとコミュニティが健全化されない。
清野:はい、それは感じています。
吉澤:今後のSG事業部との連携に期待しています。今日はありがとうございました!
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