中高生の命を守りたい! スクールガーディアンの啓蒙活動
スクールガーディアン事業部 渡邊いずみさんにインタビュー! 中高生のSNSトラブルの実態と、ネットリテラシー講演活動にかける想いを伺いました。
SNSトラブルから中高生の命を守りたい
平田:スクールガーディアンのミッションと、渡邊さんの仕事内容を教えてください。
渡邊:はい。「子どもたちが健全にインターネットを使える環境を目指して」をミッションに、主に中学生・高校生向けのネットパトロール事業を行なっています。
私はネットリテラシーの講演活動と動画作成のほか、SNSトラブルに関するご相談や調査もお受けしています。現在の講演活動はオンラインが多くを占めていますが、学校や自治体にお伺いして対面で行う場合もあります。
昨今では子どものSNSトラブルや事件が多発しており、SNSいじめなどネット上のトラブルを苦に命を絶ってしまう子どももいます。そういった状況を改善したいと思いながら、日々仕事をしています。
きっかけは被災した子どもの支援活動
平田:なぜadishでスクールガーディアンに携わろうと思ったのですか?
渡邊:様々な苦難を抱えた子どものサポートをしたい、特に中高生が自ら命を絶つという現実をどうにかしたいと思ったからです。
きっかけは、東日本大震災で被災した子どもの支援活動です。前職では、子ども支援に関する国際NGOの職員として、被災した子どもや貧困状態にある子どものサポートや学習支援をする事業に携わりました。
現地に駐在して様々な困難を抱える子どもと関わる中で、特に子どもが自ら命を絶つということをなんとかしたいと強く感じるようになりました。子どもの自殺は、中学生から格段に増えるんですよ。
NGOでの活動が終了してからも、その気持ちが全然消えなくて。引き続き現地で中高生に関わる仕事がしたいと思い、NGO退職後は県内の通信制の高校で先生になりました。
平田:高校では何を教えていたのですか?
渡邊:科目問わず、様々な教科を教えていました。
平田:すごいですね! 様々な経験を重ねてこられたのですね。
渡邊:そうですね。その後、東京に戻るタイミングでadishのスクールガーディアンの活動を知って、adishに入社しました。
中高生のSNSトラブルの実態
平田:スクールガーディアンでは、どのようなご相談が多いですか?
渡邊:生徒様同士のトラブルに関するご相談が多いです。例えば、クラスのグループLINEに恥ずかしい写真を載せられてしまったとかInstagram上で起こったトラブルで削除済みの情報を復元できないかといった技術的なご相談、なりすまし被害のご相談もあります。
平田:なるほど。様々なご依頼をいただくのですね。SNSトラブルはやはり中高生が多いのですか?
渡邊:はい、その通りです。さらに中学生と高校生では、中学生の方がSNS上でのコミュニケーションに関するトラブルが多いです。
また、最近特に多いSNSトラブルは、デジタル性被害です。裸の写真を送ってしまった、ネット上に載せられてしまったという被害が非常に増えています。このようなご相談を受けた際には、スクールガーディアンの方で該当の画像が拡散していないか調べたり、削除依頼が出せないか調べるといったような対応を行っています。
思春期の学生に「自分ごと」として伝えるには?
平田:生徒向けのネットリテラシー講演では、何を話すのですか?
渡邊:講演では、実際にあったSNSトラブルを紹介しながら、利用するときの注意点を話します。
ただ、中高生は「自分は大丈夫」「それは、やらかしちゃった人の話でしょ」と他人ごとに捉えてしまう子もいるので、講演の最後に「自分を守るのは自分です。自分ごととして捉えて行動してください」と強く伝えるようにしています。
平田:思春期の子にきちんと伝えるのはなかなか難しいですよね。伝え方のポイントをぜひ教えてください。
渡邊:はい。まずは、学校で実際に起きたトラブルや特に取り上げてほしい話題を先生方にお伺いして、内容をきちんと作り込むことを意識しています。
次に、講演では「一方的に話さない」ことを意識しています。生徒に質問を投げかけて挙手してもらったり、こちらからインタビューに行ったり、ワークシートを用意して書きながら聞いてもらうという工夫をしています。
あと、私は演技派なので、怖い事例のときには気迫が伝わるような話し方や演出もしますよ。生徒がガヤガヤしている時は「ちょっとペンを置いて顔を上げて」と、こちらに集中する姿勢を作るとか。
平田:演技力は重要ですね。昨今、様々なSNSサービスがありますよね。講演のご依頼も増えているのでしょうか?
渡邊:はい。コロナの影響で、オンライン講演や動画の作成依頼が増えています。北海道から沖縄まで、全国の学校・自治体様からご依頼をいただきます。SNSトラブルに多くの子どもが巻き込まれているという社会的な課題を鑑みて、事前に防ぐことを目的としたご依頼が多いです。
ネットパトロール専門の業者が話すことに意義を感じていただいております。
保護者の関わり方は? 親の心構え三箇条
平田:子どもを守るために親はどう行動したらよいのでしょうか。
渡邊:はい。昨日まさに保護者向けの動画「親の心構え三箇条」を作っていました。
平田:ぜひ教えてください!
渡邊:一つ目は「子どもがスマホをどう使っているか知る」。おすすめは、子どもと一緒にSNSやネットサービスを使ってみることです。子どもが楽しさを感じるところや、危険なところに気が付くと思います。一緒に使いながら、利用の注意ポイントを話し合ってみてください。
二つ目は、「環境づくり」です。具体的には、スマホのフィルタリングとペアレンタルコントロールの設定です。気が付いたら子どもが湯水のようにお金を使っていたということが起きないようにしたいですよね。
そもそも課金はしない、課金する時はプリペイドカードを使う、ペアレンタルコントロールを使って親の許可なしに課金できないようにするといった環境作りをしましょう。
三つ目は、「ルール作り」です。スマホとSNSの使い方や利用時間について、家庭内のルールを作りましょう。
スマホは、親が子どもに買い与えたものです。親がきちんと責任を持つという前提で、この三つのポイントを必ずお伝えしています。
平田:親としての自覚を持って、三つのポイントを押えていくのが大切ですね。親も子どもも先生も、みんなリテラシーを身につけていかなければいけないということですね。
渡邊:そうですね。スマホを使っている以上、必須ですね。
平田:このような保護者向けの動画作成や講演も多いのでしょうか。
渡邊:はい。最近はもっぱら動画ですね。動画をYouTubeに限定公開でアップして、URLを保護者様に配布します。
動画ではないのですが、半年ほど前、保護者向けのネットリテラシー講演に参加された保護者様からお手紙をいただいたことがあります。お褒めの言葉とお礼、さらに相談したいことがありますという内容でした。
スクールガーディアンでは保護者の方と直接のやりとりができないため、学校を通じてのやりとりになったのですが、お手紙をいただいたことはとても印象的なできごとでした。
今後の展望
平田:最後に、今後の展望をお聞かせください。
渡邊:はい。先生や保護者といった大人の方に向けて、ネットリテラシーを学べる機会を増やしていきたいです。現在、先生向けの研修会の回数を増やし、オンラインで参加しやすい取り組みをしています。同時に、講演の営業にも力を入れています。
平田:やはり、大人のリテラシー教育が必要ということですね。大人が子どもを巻き込んでいるケースも多いですよね。親として、子どもを守るためにどうしたらよいのでしょうか。
渡邊:私たちができることは、まずはスマホに関する機能やサービスについて保護者や先生方に知っていただきつつ、注意が必要なポイントについてお伝えしていくことです。ですので、保護者の皆さまには積極的にこうした知識を学んでいただいて、どのような環境やルールで利用するべきかを定期的にお子さまと一緒に話し合い、上手に活用されると良いかと思います。
平田:なるほど。今後もネットリテラシー講演を通じて、健全なネット社会が実現できるように頑張ってください!
渡邊:はい。ありがとうございます。
平田:本日はありがとうございました。
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