見出し画像

AIを備えたスライド作成サービス「イルシル」は、「情報をわかりやすく伝える」ための第一歩|【株式会社イルシル様】

アディッシュ公式noteでは、さまざまな業界で新しい視点の事業を推進するスタートアップ企業をご紹介しています。今回お話を伺ったのは、日本人向けのAI搭載スライド自動生成サービス「イルシル」を運営する株式会社イルシル代表の宮﨑有貴さんです。AIとの対話によるスライド作成や、1000種類以上のテンプレートといったイルシルの特徴、類似サービスとの差別化要素について聞きました。

宮﨑 有貴氏

※以下、主に会社を指すときは「イルシル社」、サービスを指すときは「イルシル」と表記します。


「情報をわかりやすく伝える」ために創業

── イルシル社を創業した経緯を教えてください。

私は大学生時代に広告・教育系のスタートアップでインターンをしていました。その後3年生のときに広告運用をするフリーランスとして活動を開始。大学4年時の2021年に株式会社ルビス(2024年に「株式会社イルシル」へ社名変更)を創業しました。

── 創業し、早速イルシルの開発に取り掛かったのでしょうか。

そもそも「イルシル」という社名・サービス名は、「難しいことをわかりやすく説明する」というニュアンスを含む「Elucidate」という英単語を元にして名付けました。そのため会社には「わかりやすく物事を伝えられるようにする」ことに興味があるメンバーが集まっています。創業した頃はアメリカでアニメーション映像サービスが勃興していた時期です。日本向けにアニメーションを作れるサービスがあれば「世の中の情報がわかりやすく整理されていく」と思い、僕らも開発に取り掛かりました。

まずは200〜300人にインタビューを実施。しかしその結果、そもそもアニメーションを作る人が少ないということが発覚し、そのサービスの開発は頓挫。ですがその過程で、スライド作成に困っている方が多いことを発見しました。スライド作成も立派な「わかりやすく物事を伝えられるようにする」ことだし、日本発のスライド作成サービスはまだ目立ったものはない。だったら「わかりやすさ×スライド」視点のサービスを作ろう。そう思って開発したのが、AI搭載スライド自動生成サービス「イルシル」です。

営業資料3000枚を分析した、日本人向けのスライド作成サービス

── それでは改めてイルシルについて教えてください。

イルシルは、日本人が使いやすいデザインに特化したAIを搭載したスライド作成サービスです。「AIとの対話型でスライド作成する」「1000種類以上のテンプレート」「テーマ変更機能」という3つの特徴を備えています。

イルシルの使い方

イルシルを使うにあたってはまず、例えば「SNSの運用方針」といった具合にキーワードを入力。それを基にAIがプレゼンテーション全体の構成を考えてくれます。この構成は自由に修正可能です。全体の構成ができたら、次は各スライドの文章案が出てきて、「スライド生成」ボタンを押下すると、自動でいくつものスライドデザインが提案されます。作成したスライドはPowerPointのようにサービス内で修正も可能。スライドを作る上でよく使うパーツも用意しています。

キーワードから全体構成が提案される
スライドの頻出パーツも用意

このようにキーワードだけでもスライドは作成可能ですが、WordやGoogleドキュメント、メモ帳などに伝えたい内容を一旦まとめて、それをビジュアル化するという使い方をオススメしています。ChatGPTと対話しながら全体の流れとスライドの中身を確定し、それをデザインにするという使い方をする方も少なくありません。

右に構成を入れることで、スライドが自動生成される

イルシル最大の差別化要素は、世の中で使われている営業資料3000枚を分析して作った、1000種類以上の「日本人が使いやすいデザインテンプレート」です。例えば「デザイン一覧」の中から「営業資料」を選ぶと、課題やサービス紹介といったテンプレートがたくさん出てくるので、その中から気に入ったものを選べばすぐにスライドにできます。入力欄に文書を書き込むと、テキスト量に合わせて別のデザインが提案されるという仕組みも実装しました。

スライドテーマも変更可能で、色合いを変更したり、フォントを一括で変えたり、ロゴを入れたりといったことにも対応しています。

── PowerPointやGoogleスライドでできそうなことはかなりできそうですね。逆にできないことはあるのでしょうか。

機能としては大きく劣ることはないのではないかと思っています。ただ細かいところではまだ操作性が及ばない点はありますし、ショートカットキーも多くないので、順次開発を進めているところです。ただ皆さんPowerPointに慣れているということもあり、一旦イルシルで大枠を作成し、微修正はPowerPointで対応するという方も少なくありませんね。

ビジネス用途特化が差別化要素

── イルシルのユーザーにはどういった方が多いのでしょうか。

まず、イルシルは簡単に利用できるので、スライド作成やデザインが苦手な方にもご利用いただいています。特定の業界に特化しているわけでもないので、幅広い業界で使っていただいていますね。

職種的には今のところ、スタートアップ経営者が多いでしょうか。スタートアップなどの比較的小さな会社では、社内に時間の余裕があるデザイナーがいるならいざ知らず、ピッチ資料や営業資料を作るのは経営者というケースが多いですからね。とはいえ本当に色んな職種の方に使っていただいていて、営業職の方は営業資料作成のため、人事職の方は社内マニュアルを作成するため、といったような使われ方も珍しくありません。

お客さまからは「資料作成の時間が1/3になった」「外注先とのコミュニケーションコストがなくなった」といった声が届いています。

またイルシルはパーソナルプランは1,680円、ビジネスプランは2,980円(一人あたり月額、税別。2024年2月時点)で提供しています。スライド作成を外注しようとすると、5,000〜10,000円/枚程度の費用がかかるため、イルシルを使っていただければかなり低コストでスライド作成ができるようになりますね。

── 法人契約をするケースもあるんですね。

まずは個人が自費で最初に使って気に入り、法人で契約すれば一人当たりの料金が下がるということもあって、そのまま法人契約に繋がるというパターンが多いですね。

── ちなみにスタートアップ界隈だと、例えばCanvaのようなサービスを使ってスライドを作成する方も少なくありません。どのような点が差別化要素になるのでしょうか。

確かに、イルシルを利用していない方からは「XXX(サービス名)とどこが違うの?」と、よく聞かれます。実際、現時点ではイルシルのユーザーにはITリテラシーが高い方々が多いということもあって、実際には他サービスとイルシルを併用されている方がほとんどです。

そんな中、イルシルの特徴はビジネスシーンに特化している点です。例えば「価格表」を検索すれば、「月額料金の価格表」から「初期費用+月額費用」まで、あらゆるテンプレートを横断的に検索できます。また他のサービスは華美なデザインフォーマットも少なくありませんが、ビジネスではそういったデザインは使いにくいですよね。そういった意味でイルシルは、ビジネス用途でのスライド作成に最適な選択肢になっていると考えています。

スライド作成に限らず、情報がわかりやすくなる世界をつくる

── 今後の展開としてスライド作成以外、例えば行政関連の難しい文章をわかりやすくする、といったこともあり得るのでしょうか。

そうですね。ビジネスでなくとも、生活がかかっていたり、本当に困っていたりする方には、正しい情報を届けられるようにしていきたいです。

── イルシルは日本(人)向けに開発しているとのことですが、今後世界に打って出るような可能性もありえますか?

はい。正直、日本に強くこだわっているわけではありません。国内ではまだ競合が少ないので、まずは日本で軸足を作り、そこから世界に展開していきたいと考えています。

── 最後に、イルシル社を中長期的にどう成長させていきたいか、教えてください。

僕は年間100〜200冊の本を読むのですが、読書で知識を得てできることが増えると、自分の可能性が広がるのを感じます。それで周りの人にも気に入った本を薦めるのですが、なかなか読んでくれないんですよね。忙しかったり面倒だったりするのもあるのでしょうが、根本原因は「わかりにくい」からだと考えています。実際、近年はYouTuberが情報をわかりやすく解説する動画の視聴数が伸長。これまで人の目に触れなかった有益な情報が、広く世に届く時代になってきています。

ところで、イルシル社はミッションに「テクノロジーとクリエイティブの力で『わかりやすく』」を掲げています。中長期的にはこのミッションに従い、わかりにくいものをわかりやすくする活動を続ける予定です。現在はスライド作成にフォーカスしていますが、「情報をわかりやすく伝える」ためには、必ずしもスライド形式が適しているわけではありません。例えば記事の途中に図解を入れることでも情報はわかりやすくなりますよね。イルシルではそういったものまで作れるように、現在開発を進めていきたいですね。

── 宮﨑さん、本日はありがとうございました!

※記事中の画像はすべてイルシル様の提供の元、加工したものです。
(取材協力:pilot boat)