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一人ひとりの医療従事者を輝かせ、強い組織をつくる礎となる。レガシーな医療業界でデジタル化による人材活用を推進する【株式会社エピグノ様】

こんにちは、アディッシュの平田です。アディッシュ公式noteでは、さまざまな業界で新しい視点の事業を推進するスタートアップ企業をご紹介しています。本日ご紹介するのは、医療業界に人材マネジメントの視点で切り込み、医療機関の業務改革に挑戦する株式会社エピグノです。代表取締役の乾 文良様(写真中央)にお話を伺ってきました。

サービス内容と起業の経緯

エピグノ様⑤

ーはじめに、御社について教えていただけますか。

乾様(以下、乾):はい。医療機関に特化した人材マネジメントシステムを開発提供している株式会社エピグノと言います。社名の由来は古代ギリシャ語で「叡智」を意味する「Epignosis」です。一般的な企業と比較して、日本の医療機関は経営が厳しい施設様が多く存在します。診療報酬点数制度など既存の枠組みの中で、がんばりが必ずしも報われない状態で、さまざまな課題を抱えています。そうした医療機関が苦手とする「マネジメント」を支える叡智を与えたいという想いから名付けました。

ーなぜ医療分野での起業だったのでしょうか。

乾:実家はインフラ系企業をお客様とする、産業系機器を扱う商社でした。父が2代目で、私も後を継ぐかどうか迷いましたが、自分が作りたい会社像を強く持っていたので起業という道を選びました。

産業系の機器インフラビジネスを小さい時から見ていた影響か、自然と「未来まで残るような長く愛されるビジネスが良い」と考えるようになっていました。そこで自分の特性と合う分野を考えていた時に、共同創業者でビジネススクールの同級生だった志賀と話をしたんです。

志賀は東北大学病院の麻酔科医でもあり、大きな病院のオペ室に長年勤務してきて現場業務に課題感を持っていました。医療分野でのビジネスはまさに社会的な意義の高い事業です。本当に信頼できる彼と一緒なら、というのもあって一歩踏み出すことを決意したんです。

ー最初から臨床に近いところではなくマネジメントをサポートすることを意識されていたのですか。

乾:いいえ。起業当時は、手術室の手術室実績の可視化や手術のスケジュールを自動でAIがつくるというようなプロダクトを発表しました。ただ、実務では「患者さんの状態やご家族の社会的状況を考慮する」とか「その手術を行える医師やナースを手配する」というように複雑な状況を汲んだ上でスケジュールを作成しなければいけないんです。こうした事情を把握せずにAIのソリューションを開発し、実証実験しましたが、うまくいきませんでした。

その最大の要因として注目したのが人材のスキルマネジメントです。ナースに限らず、医療の現場に携わる方には色々な職業がありますが、民間企業以上に人材管理という点で立ち遅れています。履歴書、資格、研修など診療経験については紙で管理されているだけ、あるいは誰かの頭に入ってるだけという場合もあります。スタッフのスキル管理が煩雑で、異動や配置転換の判断が属人的だというのはよくある課題です。そこで人材管理業務のDX化と、ここで得られたデータによるタレントマネジメントという方向へスイッチしていきました。

エピグノ様④

ーそれが『エピタルHR』ですね。

乾:はい。医療人材のスキルや評価をデータで可視化して、適切な人材配置やエンゲージメント・モチベーションの向上などに活用していただけます。

そもそも医師や看護師など医療人材は有資格者で、圧倒的な売り手市場です。現場の管理責任者はマネジメントを学んできた方ではないため、組織がまとまるかは人格者かどうか次第、という属人的な状態が一般的です。ただ、コロナ禍において医療機関のエンゲージメントの実態に対する関心は高まりつつありますね。

お客様が気づいていない潜在的なニーズに陽を当てる

ー商談はこれまでの「当たり前」を覆すようなご提案になると思うのですが、お客様の反応はいかがですか?

乾:あまりピンと来ないという方も、イノベーター的な方もいらっしゃいます。近頃では『ユビー(https://ubie.life/)』など業界内で注目されるサービスも生まれ、医療機関のDX、デジタル化への機運は高まりつつあります。医療業界全体がデジタル化の黎明期にある中で、潜在的なニーズを顕在化させる活動は挑戦しがいがありますが、もどかしく感じてしまうこともありますね。

ー競合はどのような会社になるのでしょう?

乾:ほとんどありません。シフトを組む、スキル管理を行う、エンゲージメントやモチベーションを測る、といった個別機能にフォーカスすれば、競合にあたるサービスもありますが、医療分野で同じような切り口で展開している訳ではないので。

ーなるほど。エピタルHRは既存のシステムの代替ではないため、お客様にとっては新規投資という位置付けになるのでしょうか。

乾:はい、そのとおりです。お客さまは比較的大きな施設が多く、どちらかといえば急性期の病院が多い印象です。費用はサブスクリプション形式で、使用する機能やユーザー数によって異なります。

ー思い切った投資判断が必要となれば、お客様の規模や担当者の方との相性が重要ですね。実際にプロモーション活動としてはどのような活動をされていますか?

乾:理事長・院長、事務部様、看護部様などから問い合わせをいただくこともありますが、
今のところはアウトバウンドが多いです。今後は弊社の認知度・信頼度を向上するための取り組みに注力していく予定で、より多くの方に弊社サービスをご理解頂けるような仕組みを作って参ります。

医療業界は想像していた以上に”レガシー”だった

エピグノ様③

ーサービス発表後に改めて実感したことや想定していなかったニーズなどがあれば教えてください。

乾:端的には「思った以上にレガシーだった」というのが実感です。まず、医療機関はITインフラが脆弱です。外部のネットワークに接続可能なPCも十分な台数確保されていませんし、スタッフはメールアドレスも持っていません。個人のITリテラシーも高いとはいえず、なによりも人材マネジメントに対する意識が薄いことに驚きました。

ただ、人材育成の観点で見ると、高度な専門職の集合体なので研修や教育に力を入れているのは嬉しいことでした。現場は「やりたい気持ちはあるが、まだまだアナログ」というのが現状です。ですから「研修の管理、人材の教育の管理をDX化して楽にしましょう。人を育てていきましょう」という視点でご提案をさせていただいています。

ーお客様の反応はいかがですか?
乾:おかげさまで「シフトを自動で組んで、それを元に厚労省の定めた届出書の形式に合わせて自動出力する」というような業務の自動化、デジタル化一つでも喜んでいただいています。
 
看護部長の方からは、「総務に電話して履歴書を取り寄せたり、直接足を運んで師長に確認したりしていたのが、PCで人材情報にアクセスして全部見られるようになって嬉しい」「配置を考えるときにすごく楽になった」と、人材を俯瞰してみる立場からのお声をいただきます。また、もう少し現場に近い師長の方は、「シフト組みが自動化されて嬉しい。出勤時、壁に張り出した紙に期日までに書き込むスタイルだったが、システムを通じて希望を入力しやすくなった」と日常業務の効率化に気づきが多いようです。

一方で、改善すべき点も少なくありません。先にお伝えした通り、お客様の環境によっては電波が弱いとかネットに繋がるPCの台数が足りず、入力のために残業が発生しているとか、製品のUIがわかりづらく、数ヶ月かけてもオンボーディングがうまくいかないなど、さまざまなケースがあります。誰もがスムーズに使える状態をめざしてサービスを磨いていきます。

医療従事者がもっと誇りを抱いて働ける世界を

ー今後はどのような活動を意識していきたいとお考えですか?

乾:レガシー業界の代表が教育業界と医療業界ですよね。教育業界で市場が広がりつつあるエドテックと同じように、ヘルスケア業界にも認知度の高い企業はありますが、真正面から医療機関をお客様としている企業にとって、医療業界での市場開拓は骨の折れる取り組みです。それでもKOL(Key Opinion Leaderの略。医療業界で多方面に影響力を持つ人間)と啓蒙活動を進め、厚生労働省など関係各所へ人材の重要性をうたっていきたいです。

ー弊社もスクールガーディアンという学生向けのネットパトロール事業を展開していますが、いじめに関する法律改訂に対して、文部科学省に「パブリックコメント」を提出したり、議員の方を紹介していただいたりと模索しながら動き続けていました。どのような課題に応え貢献する事業かを訴え続けた経緯があるので、共感します。

乾:そうでしたか。私は医療機関を対象にしたIT補助金など、経済的な支援が必要だと考えています。国内で売上数百億クラスの医療機関は非常に少ないですし、そもそも薄利経営で投資余力はないんです。ロビー活動についてはあまりピンときていませんでしたが、「提言」という形で発信していくこともきっかけになり得るのですね。

ー参考にしていただけたら嬉しいです。最後に、乾さんが事業を通じて社会をどのように変えていきたいと考えていらっしゃるかお聞かせください。

乾:ずっと商売人の家に育ったので、がんばっている経営者、がんばって働いている人が正しく評価されるべきという考えが根底にあります。サービスを提供した相手から評価されたり褒められたり、その結果昇進したり。そんな健全な競争原理が働くべきだと思うんです。

ただし医療機関に目を転ずると、国民皆保険の制度で売上の上限も見えている中で、スマートな人材マネジメントなどなく、患者さんからの評価も伝わりづらい職場というのが現状です。だから私は、医療従事者のみなさんにサービスを提供することで「がんばった甲斐があった」と思える世界になるよう貢献したいです。

エピタルHRは患者さんからは見えない世界のツールですが、医療従事者の業務が楽になって臨床に集中できるようになることは、患者さんやご家族のためになるでしょう。そうして患者さんに感謝されたり、関わる方から褒められることで、医療従事者が自らの仕事に誇りを持って生きていける世界を作りたいと思います。

エピグノ様②

ー乾さま、本日はありがとうございました。

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