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マイクロモビリティの可能性

電動キックボードのシェアリングサービスが注目

人の移動手段に変革をもたらすMaaS(Mobility as a Service)という分野がいま注目されています。最近だと、電動キックボードを提供するLuupが話題です。これまで電動キックボードは日本の道路交通法上、原動機付自転車という扱いだったので条件が厳しく、シェアリングサービスを提供してもなかなか普及しないのが実情でした。しかし最近は条件を緩和して、より簡単に乗れるようにしようという動きが加速しています。実際2021年4月、Luupが経産省の新事業特例制度を利用して、これまでの原付の扱いから小型特殊自動車と認められ、それによって自転車と同じような扱いで電動キックボードに乗れるようになりました。今後もこうした動きが活性化され、電動キックボード市場はどんどん広がっていくのではないかと思われます。

しかし、日本の電動キックボードの市場は世界的にみるとかなり遅れ気味です。海外だと、いまではごく当たり前のように電動キックボードのシェアリングサービスが使われています。欧米だとLime、TIER、Birdなど複数のサービスが乱立してる状態で、ボストンコンサルティングの調べによると、世界市場規模は2025年に400億~500億ドルに達するそうです。日本では法律の壁が立ちはだかり、思うように普及が進まないのが現状です。規制緩和がどこまで可能なのか、そこが今後の論点になるでしょう。

参照:https://www.bcg.com/ja-jp/press/06february2020-how-e-scooters-can-win-a-place-in-urban-transport)

筆者も実際、数年前にサンフランシスコやヨーロッパで電動キックボードのシェアリングサービスをアプリを使って利用した経験がありますが、いたるところに電動キックボードが置かれていて、いつでも簡単に乗り降りすることができました。特にサンフランシスコのように土地が広い場所だと、4~5ブロック先のちょっと離れた場所に向かうのに、電車やバスに乗る必要もなく、とても便利で重宝しました。

使い方も簡単です。アプリをダウンロードして、地図の中から利用可能な電動キックボードを位置情報から検索し、手に入れたらあとはロックを解除するだけです。

下のキャプチャと写真は、以前筆者がオーストリアのウィーンで使ったときのものです。この時はTIERを使いました。実際アプリから地図を開いてみると、たくさんの電動キックボードが街中に置かれているのがわかります。

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電動キックボードが置かれた場所まで行ったら、ロックを解除します。実際にはこんな感じで街中に放置されています。

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あとは乗るだけです。乗るのも実際はすごく簡単です。最初だけちょっと戸惑うかもしれませんが、普通のキックボードと同じように片足で地面を蹴って前に進みます。その状態でアクセルボタンをくいっと押すと加速し、20km前後までスピードを出すことができます。自転車のようにわざわざペダルを漕ぐ必要もないのでほとんど体力を必要としません。

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ラストワンマイルの交通手段

では、こうした電動キックボードはどのような場面で有効なのでしょうか。筆者が実際に乗った経験からすると、ラストワンマイル(最後の1マイル)の利用に適していると感じます。

例えば都市部で例をあげると、会社のお昼休み時間、ランチに行こうとすると、徒歩圏内でいけるお店は限られてしまいますが、電動キックボードを使えば、数キロ先まで一気に範囲を広げることができますよね。例えば徒歩4分で行ける範囲はだいたい300メートルくらいですが、電動キックボードだと時速15キロメートルで4分走れば1キロメートル先まで向かうことができます。都内で700メートル範囲が違えば、ランチする場所も一気に広がりますよね。このように、「あとちょっと先に行きたい」という需要(=ラストワンマイル)にぴったりのサービスではないかと思います。

あるいは観光地でも有効活用が可能です。沖縄でも実際いくつかの電動キックボードのレンタル事業が展開されています。青い海と広いビーチを横目に風を切りながら走れるのは気持ちがいい体験ですよね。例えばRimoという会社は名護市や恩納村を中心にリース事業を展開しています。沖縄の58号線はとても長く、ビーチからビーチの間は歩くには距離があるので、ちょっとした移動の際に重宝するのではないでしょうか。


他にも、電動キックボードはコロナ対策としても有効です。電車やバスの交通機関を使わないので密を避けることができますし、コストも安く、快適です。普及すれば、混雑を解消することにもつながります。デメリットを挙げるとしたら、天候に左右されるところでしょうか。両手が塞がっているので傘はさせませんし、滑りやすく転倒のおそれもあるので、雨や雪、風が強い日などは厳しいかもしれません。

環境保全としてのマイクロモビリティに注目

こうしたラストワンマイルに適したモビリティサービスをマイクロモビリティと言います。前述したように、この"超小型自動車"のメリットは複数挙げられます。ランチや買い物などのちょっとした移動手段として、あるいは観光地の移動手段として、人の移動に大きな変革をもたらすため、コロナ対策としても可能性を秘めています。

また、それ以外に最近注目されているのが環境対策としての側面です。SDGsの取り組みが世界中で推進されていますが、それに乗じて自然エネルギーを利用したマイクロモビリティサービスの開発が進められています。

例えばエコ大国であるニュージーランドのグレードバリア島では、ソーラー充電式の電動バイクを観光客の新たな交通手段として普及させることで、持続可能性につとめています。日本でも、瀬戸内海に浮かぶ大分県姫島において、マイクロモビリティによるエコツーリズムが推進されています。島一帯にランドカーなどのマイクロモビリティを設置しており、これらも太陽光発電を用いた自然エネルギーによる充電を可能にしており、二酸化炭素の排出をなくす取り組みとして 注目されています。

エコロジーなマイクロモビリティというキーワードは今後さらに重要性を増すのではないでしょうか。

ライター
adish 事業開発顧問 吉澤和之

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