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不安症をVRでトレーニング。苦手克服VRトレーニングシステム「NaReRu」はどう生まれたのか

こんにちは、アディッシュの小原です!
「電車の人混みが怖くて電車に乗れない」、「雷が怖くて外に出れない」、そういった特定の不安や緊張を強く感じてしまう不安症が存在しています。このような疾患の改善を目指すソーシャルグッドなスタートアップ企業「魔法アプリ」さんが吉祥寺にあります。今日は代表取締役の福井さんにお話を聞いてきました。

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代表取締役 福井さん

サービス内容について
小原:具体的にどのようなサービスを提供されているのでしょうか。

福井:弊社では「苦手克服VRトレーニングシステムNaReRu」を開発しております。
VR空間で、苦手な環境や物に対し、段階的に慣れていくソフトウェアです。主に生活に支障をきたしてしまうレベルの苦手がある方へ向けた製品となっています。生活に支障をきたしてしまうレベルの苦手の例に、不安症と言う精神疾患があります。不安症とは一言で言うと、「過剰に不安を感じてしまう病気」です。たとえば不安症の一つであるパニック症では、多くの患者さんがすぐに逃げ出せない環境を苦手としており、電車や飛行機に乗れない方が多く存在します。また、雷恐怖症で雷が落ちていると出社できない、社交不安症で面接にいけないなど。そういった方が日本国内で700~800万人ほど存在しているという状況です。

小原:結構思ったよりも多いんですね。

福井:そうですね。

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福井:年間損失は慶応義塾大学の調査で2兆3932億円ほど。主に罹病費用(非就業費用等)による損失が一番大きい部分になっています。この不安症の治療に用いられるのが薬物療法と心理療法(カウンセリング)ですね。このカウンセリングの中に認知行動療法がありその1つとして曝露療法というものがあります。例えば、パニック症で電車に乗れない人に、まずはホームで20分30分立って不安が下がるまで待ち続けてみましょう、みたいな形で、実際苦手なことを曝露していくという治療です。最初はどんどん不安や恐怖感情が上がってくるけれど20分から30分ほど同じ状況に曝露することで、徐々に慣れてきて、不安や恐怖感情が落ち着いてきます。また、このように不安に慣れてくる現象を「馴化」と言います。

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ただこの療法にも課題があって。飛行機が苦手な人に、カウンセリングルームのような空間で曝露療法はできません。じゃあ実際に飛行機に乗ってみましょうって言っても無理じゃないですか。電車も厳しいし、雷なんかじゃあ起こしますね、みたいなことは無理じゃないですか。そのため今までは患者さんに想像の中でやってもらうか、宿題でやってきてもらうっていうのが主流になっていました。これらの課題に対して、VRを活用することでカウンセリングルームの中でも新幹線や飛行機であったりだとか高所だったり雷だったり様々な空間に曝露することができる、それがVR曝露療法というものです。

このVR曝露療法自体は結構海外ではメジャーなものになっていて。もともとはアメリカの帰還兵のPTSDの治療で使われたのが最初。そこからアメリカやスペイン、それぞれの国や地域で開発され研究され続けて今に至る状況になっています。アメリカやスペイン、リトアニアには会社として提供しているところもあります。こんな感じで国ごとに分かれて進められているのですが、なぜかというと不安の対象って国や地域によって違ってくるという特徴があります。例えばアメリカだと外国人恐怖症みたいなケースがあります。要は白人にいじめられた経験があるだとか黒人にいじめられたとかがあったりすると、職場に人種が入り乱れているので不安になってしまうケースだったりとか。あと中国だと旧正月って爆竹を滅茶苦茶鳴らすじゃないですか。それで怪我をした経験から旧正月は家から出られないだったり、地域や文化によって恐怖の対象が変わってくる。もっとわかりやすいケースですと、日本では蜘蛛が苦手な人よりゴキブリが苦手な人が圧倒的に多いじゃないですか。でもアメリカで一番多いのは圧倒的に蜘蛛恐怖症なんですね。理由としては日本の蜘蛛は大きさも小さめで、毒蜘蛛も少ない。一方でアメリカでは大きいサイズの蜘蛛や毒蜘蛛も多く、そういった影響で蜘蛛恐怖が一番多いみたいです。

小原:確かにそれは怖い。。

福井:そういった違いで外国のものは使いにくく、2018年頃までは日本で数件くらいしかVR曝露療法ができる施設が無かったという状況になっていました。そこで私たちが日本人に特化したソフトウェアを作ってみようということでこちらの製品「NaReRu」というものを開発しました。

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日本だと医療機器の認定項目にVR曝露療法自体がなかったので現状非医療機器となっております。また現状は薬機法に縛られているので何とか療法とか不安とか書いちゃいけないというので、苦手に慣れていくって意味で「NaReRu」だったりとか、不安克服だと不安症の治療になっちゃうので苦手克服、治療じゃなくてトレーニングというふうに文字を言い換えて表現をしています。
製品の特徴としては、東京メトロさんやJALさんのご協力を頂いて商用利用許諾を結んで、実際に普段乗るような電車や飛行機の景色をCGで再現している点があります。まだまだ非医療機器ではあるんですけど臨床研究を行っておりまして、北海道の五稜会病院さんで臨床研究を行っています。

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小原:VRで出てくる内容はCGなんですか?

福井:基本的には360°映像ではなくて全てCGで作っています。例えば雷とかなかなか撮影できないじゃないですか。そういったものも作成できますし、苦手な環境…例えば電車の緊急停止だったりとか、そういったことを好きなタイミングで行うことができるというのが弊社のシステムの特徴となっています。

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小原:なるほど、たしかにそうですね。

起業の経緯
小原:起業に至った経緯を教えていただいてもよろしいですか?

福井:私の親父が公認心理士で、日本で唯一VR曝露療法を提供していた病院に勤めていたんですね。そのVRが壊れたっていう話が親父からあって、すぐに直してくれと相談がありました。
2017年という年で当時はプレステVRとかOculus(オキュラス)とか出てきたタイミングで、「あぁ初めてVR触るなぁワクワクするなぁ」と思って言ったら出てきたのがこれだったんですよ。これご存じですか?

小原:知らないですね。。

福井:今検索しても出てこないんですけどVFXっていう1990年に販売されたVR機材です。

小原:1990年!

福井:対応機材はWindowsXPがギリギリ動くくらい、実際は無理矢理動かしてるんでWindows95が推奨機。

小原:95…懐かしい。

福井:販売元にダメ元でメール送ったんですよ。でも、誰からも返事が返ってこなくて。電話番号に架けても出ないし。まぁ連絡はつかなくて。でも親父からは「患者さんも困ってる、今も使ってるから早く直してくれ」と言われて。そう言われて思わず「わかりました、やります」って言っちゃって。こうなると直せもしないし仕方がないから、まず海外のものを買うことを考えたんですね。今は買えるんですけど当時は購入することができなかった。日本向けに販売している企業がなかったんで買うこともできない。当時、僕の同級生でもパニック症で学校これなくなっちゃった友達がいて。学校のバスに乗れなくなっちゃって。学校が山の中だったんで1時間半くらい歩かないと行けないような場所だったんで、それで休学しちゃったんですね。
また病気のことを正直理解しきれていなかったと思ったことがあって。雷恐怖症って本当に困ってる人だと何十年も雨の中歩いたことがなかったりとかするんですね。で、そうなると就職しても「雷が怖いので会社行けません」って言っても、会社側にはそれは通じないじゃないですか。そういった方が思った以上に多くて。この問題に気がつき、また解決手段もわかっているにもかかわらず、もし自分がここで就職しちゃうとこの問題はそのまま残ってしまうんだろうなと思って。ちょうど大学卒業時期だったので大学院は経営系に行って、経営を学んで、会社を興して、このプロダクトで今まで治療を受けたくても受けられなかった人とかに提供していきたいなという思いで始めたのがきっかけでしたね。

実体験
小原:実際に体験させていただいてもよろしいでしょうか?平田が体験させていただきます!
福井:はい、もちろん!

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装着中の平田

福井:こちらが実際の管理画面になります。どんな画面が見えているのかであったり、画面内でのアクション(例えば雷の強さや時間帯など)を調整したり、実際の不安度をいれていったりなどできます。

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管理画面の様子

平田:すごい、とってもリアルですね。電車で聞く音声であったり、周りの人の量、目線の高さなど、いろいろと調整することができるんですね。

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電車でつり革をつかもとうとしている

福井:はい、先程も申しましたが、東京メトロさんにご協力いただき、実際の電車と同じになっています

平田:こういった経験がVRでできるのは患者さんにとってとても助かることですね。

最後に
小原:ご説明いただきまして、ありがとうございました!パニック症は知っていましたが、雷などでそこまで社会生活に影響を受けてしまっている方がいるのは知りませんでした。とても意義のある事業をされているなぁと改めて感じました。僕らで何かお手伝いできることがあればお気軽にお声がけください!

福井:こちらこそありがとうございました!

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