医療機関サクセスの再現性のために「型」をアディッシュと作成。腸内フローラ検査「マイキンソー プロ」のCS事例【株式会社サイキンソー】
個人向け腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)(以下「マイキンソー」)」を運営する株式会社サイキンソー様(以下「サイキンソー」)は、その関連サービスとして、医療機関で受けられる「マイキンソー プロ」を運営しています。全国1,500件以上の施設で検査ができ、今日まで成長を続けてきました。
そんなマイキンソー プロのカスタマーサクセス部門であるパートナーサクセスの方々は、ある課題を抱えていたそうです。それはスタートアップであるが故の忙しさと人員不足により、せっかく貯まった知見を「型」に落とし込めていないこと。外部の力も使って、パートナーサクセスの知見をちゃんと形式化しよう。そう考えたパートナーサクセスの方々は、アディッシュを頼ってくれました。
パートナーサクセスの方々が抱えていた課題とは。それに対してアディッシュはどんな提案ができたのか。サイキンソーとアディッシュはどんな施策を実行したのか。サイキンソーでパートナーサクセスを担当する志田結様に聞きました。
腸内フローラ検査で腸と体の調子を把握する
── 志田さん、本日はよろしくお願いします。最初に、サイキンソー社について教えてください。
サイキンソーは日本で初めて、自宅でできる腸内フローラ(腸内細菌叢(さいきんそう))検査サービスをリリースした会社です。個人向けの「マイキンソー」に加え、医療機関経由で検査できる「マイキンソー プロ」や乳幼児向けの「マイキンソー キッズ」、食品メーカーや大学のような研究機関向けにマイキンソーを活用した研究支援サービス「サイキンソー リサーチ」なども展開しています。
── これまでにどれくらいの検査を実施したのでしょうか。
個人向けや医療機関、研究支援などすべてを含め、累計約12万検体を解析しています。腸内フローラはまだまだ研究途上の分野であり、日本人の腸内フローラのデータをたくさん保有しておくことは、今後のサービス展開を見据えても非常に重要です。
実際に、このような大規模データを解析することで、例えば、喫煙者と非喫煙者では腸内フローラのバランスがかなり異なること等、新しい知見もいくつか明らかになり、より質の高い検査結果レポートの開発に繋げています。
今後はこれらの腸内フローラデータを、食品メーカーなどを中心にマーケティングや機能性表示食品の開発支援などの分野でも役立てていきたいと考えています。
── マイキンソーを複数回利用される方もいるかと思いますが、腸内フローラ検査をする度に結果は変わるものなのでしょうか。
取り組む腸活の内容にもよりますが、腸内細菌はおおよそ3ヵ月〜半年程で変わっていくと言われています。例えば医療機関向けのマイキンソー プロでは、健康診断や人間ドックのオプション検査として使われるケースが多いので、1年に1回、健康管理の一貫として検査を利用される方が多くなっています。短期間でも、しっかり腸活に取り組んでいただければ、検査結果はかなり変わってくるので、
今後は、健康診断以外のタイミングでも購入でき、腸活による変化を実感していただきやすくなるような施策も検討中です。
医療施設経由で腸内フローラ検査。アドバイスはどんな内容?
── 志田さんの担当するマイキンソー プロについて、詳しく教えてください。
マイキンソー プロは医療機関経由で腸内フローラ検査を実施して、腸内フローラのバランスの良し悪しや、「有用菌」や「要注意菌」といった私達の健康への影響度が高い菌の具体的な保有割合などを調べ、管理栄養士によるアドバイスを元に生活習慣の改善に繋げていただくサービスです。2024年4月時点で、全国約1,500件以上の施設に導入されていて、国内トップクラスの検査実績数を誇っています。医療機関の中でも特に健診施設では、他施設との差別化や、顧客単価向上を狙って導入していただくことが多いですね。個人向けのマイキンソーはオンラインでしか結果を確認できませんが、マイキンソー プロでは紙のレポートも提供しているため、年齢層の高い方などにも利用しやすいようになっています。
マイキンソー プロの特徴は大きく4つです。1つ目に、自宅で採便してポストに投函するという手軽な検査スタイルであること。一般的な健康診断のオプション検査では医療施設で血液採取をしたり検体回収をしたりするため施設に負担がかかりますが、マイキンソー プロなら患者様に検査キットを渡すだけで済むので、施設にはほとんど負担がかかりません。2つ目に、導⼊費⽤ゼロ、完全消化払いの請求で在庫リスクがない点です。検査キットの現物自体は医療機関に保管していただきますが、費用負担は施設側が患者様に検査キットを渡した時点で発生するため、コスト的にも導入しやすくなっています。3つ目に、10万人の日本人の腸内フローラデータを活かした個別のアドバイス提供ができることです。被検者向けのコールセンターや医療従事者向けの研修プログラム等のアフターサービスも充実している点も特徴です。
── マイキンソー プロを利用する方には、どんな方が多いのでしょうか。
最近はテレビや雑誌で頻繁に取り上げられる機会も多く、「腸活」や「腸内フローラ」といった言葉を聞いたことがあるという方が増えています。それで健康診断などで検査できると知って、実際に試してみるという方が多いですね。消化器のクリニック等では、お腹の悩みを抱えていて、病院にも行ったけれど原因もはっきりしないときなどに受けるというケースも少なくありません。コロナ禍では「腸内フローラを整えると免疫が強くなると聞いた」と興味をもたれる方も多かったですね。
── 検査結果と併せて、腸活へのアドバイスなどもしてもらえるのでしょうか。
はい。実際の腸内細菌の結果に合わせて「あなたはこういう結果だったので、こういう食事を取るといいですよ」といったアドバイスも検査結果レポート内で提示しています。食事以外にも、運動や飲酒、喫煙習慣、睡眠などのアドバイスもあります。例えば「果物を摂取すると有用菌であるアクティブ菌が増えて、要注意菌である不摂生菌が減りますよ」といった具合に、被検者ごとの検査結果に応じて記載しています。
── 志田さんは管理栄養士ですよね。アドバイスには管理栄養士の知識が活きているのでしょうか。
はい。サイキンソーには私以外にも多数管理栄養士が在籍しており、検査結果レポート内で記載しているアドバイスや被検者向けコールセンターはすべて、管理栄養士が栄養知識と腸内フローラの知見をハイブリッドさせたアドバイスをしています。腸活目線ならではのアドバイスの例として、「シンバイオティクス」というメソッドがあります。これは、発酵食品(菌そのもの)と食物繊維(腸内細菌のエサ)をかけあわせてとる食事法のことなのですが、一般的な栄養指導ではこのような指導はほぼ行いません。しかし、腸活では特に重要かつ基礎となる考え方なので、一般的な栄養知識に留まらないアドバイスができていると感じています。
医療機関向けのカスタマーサクセスの業務内容
── それでは、志田さんの担当するカスタマーサクセスの業務について教えてください。
私が所属するパートナーサクセスユニットではカスタマーサクセスのことを「パートナーサクセス」と呼んでいます。その業務を端的に説明すると、契約していただいている医療機関の運用サポートです。契約後のいわゆるオンボーディングに始まり、販促支援、更にはその医療機関が抱えている課題解決のお手伝いまでできる、伴走型サポートを心がけています。
── 施設ごとに課題は異なるものなのでしょうか。
そうですね。例えば医療機関と一口に言っても、クリニックと健診施設はまったく異なる組織です。クリニックは比較的規模が小さいので院長の影響が大きくなる傾向にあり、新しい検査や治療で患者様により質の良い医療を提供したい、といった院長の医療への熱い思いが直接課題に繋がっていることが多いです。他方で、健診施設は組織構造が一般的な会社と似ている分、売上UPや顧客単価UP等といった課題も多く、様々な立場の職員がいることで課題も複雑になります。それぞれに応じて課題感を引き出すことが重要です。
── パートナーからはどのような問い合わせが多いのでしょうか。
「こういう場合はどうすればいいの?」といった運用面の細かい問い合わせが一番多いですね。また検査費用は医療機関によって異なりますが、決して安い検査ではないので、導入したからといって自然と売れるようなものでもありません。そのためどうしたら出検に繋げられるかといった問い合わせも少なくないですね。
オンボーディングの「型」を作成。アディッシュ常駐メンバーの働きぶりは?
── そんな中、アディッシュにお問い合わせをいただきました。きっかけを教えてください。
元々、医療機関向けのパートナーサクセスは実施していたのですが、我々がスタートアップ企業ということもあり、限られた人員リソースの中で各自が試行錯誤しながら取り組んでいたため、ノウハウが属人化してしまい、チームとして、ちゃんとした「型」に落とし込めていませんでした。
そのためパートナーサクセスの対応や施策は個人の裁量に任せる部分が大きくなってしまっていました。それが必ずしも悪いわけではないのですが、サクセスをより効率良く、そして各メンバーが迷うことなく一定ラインの質を担保しながら実践するためにも、基本となる型が必要だと感じていました。また、これまでの経験から、契約〜運用開始〜初出検までの流れをいかにスムーズにするかが継続的なサービス利用に繋がる鍵だと感じていたため、特にそこの部分に特化した「型」を求めていました。こういった課題を整理し、解決するためには外部からの視点やプロの力を借りることも必要だと感じ、アディッシュにヘルプをお願いしました。それで担当の方に常駐していただくことになりました。
── アディッシュとどんな取り組みをしたか、教えてください。
担当の方に常駐していただく前に、何回か壁打ちをして課題を整理し、それを元にパートナーサクセスの方向性を定めました。それで取り組むことになったのが、新規導入先に対する業務構築の「型」(オンボーディング)の作成でした。これまでオンボーディングに関しては、社内マニュアルをはじめ、知見もありませんでした。その状態から既存の業務フローを整理したり、各医療機関へのヒアリング、各種データ分析を通してオンボーディングの型を一から作成してもらいました。
── 「型」には例えばどんな内容が含まれていますか?
事前の医療機関へのヒアリングやデータ分析から、チラシやポスター、パンフレットといった宣伝資材の有効性と、各医療機関で実際にどのように資材が活用されているかの状況把握ができていなかったことが明らかになりました。そこでオンボーディングでは、各医療機関に対して、販促資材の重要性や活用の仕方を重点的に伝える、という方向性にしました。こういった施策などを、逐一「型」に落とし込んでいただきました。
特に当時は、契約してから初めて検査が購入される「初出検」までの時間短縮と、休眠施設の掘り起こしに課題を感じていたので、それをマニュアル化し、一元管理できるようにまとめていただいたのには本当に助けられました。
── アディッシュの担当者の働きぶりはいかがでしたか?
自らどんどん社内の情報をキャッチアップする様子に驚きました。実はサポートに入ってくれるのと同時期に、差し込みで別プロジェクトが始まってしまい、パートナーサクセスメンバーのかなりの時間がそちらに割かれてしまっていたんです。そんな環境にも関わらず、自ら関係資料を見つけては読み込み、毎日の定例会議だけでなく、キャッチアップに繋がりそうな会議を見つけては「参加しても良いですか?」と積極的に出席され、その度に新しい目線での質問や提案をしていただきました。こちらとしては結果的に最低限の労力で最大のサポートをしていただいた形になり、大変助かりました。
ちなみに、オンボーディングの型作成の他にも、テックタッチの一貫としてのメルマガ体制構築のサポートもしていただきました。メルマガ自体は過去にも運営していたのですが、チーム内で明確な目的やKPIが設定されていなかったこともあって、一旦終了してしまっていたんです。アディッシュの担当者には、復活に際して目的・KPI設計などでご協力いただきました。
── 最後に、今後のサイキンソーのパートナーサクセスについて教えてください。
今後はさらに医療機関の課題をヒアリング・情報収集して、施設のコンサルティングができるようなレベルにまでパートナーサクセスのレベルを上げていきたいと考えています。またマイキンソー プロを導入している施設は、大口の企業や健保の新規顧客を獲得したい、等の課題を抱えているケースも少なくありません。そこに対して例えばサイキンソーの企業向けサービスと連携した提案もできるかもしれない。そういった施設のそれぞれの課題に我々がどう貢献できるのかを日々考えています。マイキンソープロを導入して良かった、と心から思ってもらえるよう、多方面から医療機関のサクセスに貢献していきたいですね。
── 志田さん、本日はありがとうございました。