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「投資家サクセス部」立ち上げをアディッシュと実行。他社事例やKPI設計より役立った「心の支え」という役割【株式会社FUNDINNO】

株式会社FUNDINNO様は、ベンチャー企業に投資で応援できる、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」や「FUNDINNO PLUS+」、非上場株式のセカンダリーマーケットサービス「FUNDINNO MARKET」、スタートアップのためのクラウド経営管理ソフト「FUNDOOR」を運営するスタートアップです。

※以下、主に会社を指す場合は「FUNDINNO社」、サービスを指す場合は「FUNDINNO」と表記します。

同社は当時、組織変更に伴い投資家の観点からカスタマーサクセス(以下「CS」)を追求する「投資家サクセス部」を新設。これまでも、マーケティング活動の一部として投資家のサポートはしてきたものの、投資家サクセスという観点で活動する専門部隊をつくるのはFUNDINNO社にとって始めてのことでした。「投資家サクセスを計るためのKPIはどうするか、経営陣にはどう報告し経営に活かすのか、そもそもどうすれば投資家サクセスは向上するのか迷っていた」と、投資家サクセス部部長に就任した高濱由佳さんは語ります。そんなときに頼っていただいたのが、これまで数々のCSサポートを実施してきたアディッシュでした。

FUNDINNO社の活動やCS業務の内容はどういったものだったのか、アディッシュは投資家サクセス部新設に伴ってどのようなお手伝いをさせていただいたのか。高濱さんに伺います。

※肩書きや組織名などは2023年10月(取材時点)のものを記載しています。


強いベンチャー企業の差が、国力の差に

── 高濱さん、本日はよろしくお願いします。最初に、FUNDINNOについて教えて下さい。

FUNDINNO社はミッションビジョンに「フェアに挑戦できる、未来を創る」を掲げ、ベンチャー企業を投資で応援する、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を運営するスタートアップです。

⼀般社団法⼈⽇本ベンチャーキャピタル協会によると、2022年の国内のベンチャー投資金額は約8000億円。これは2009年の10倍の規模であり、市場が大きく拡大していることがわかります。また、近年は岸田政権がスタートアップ支援に注力していたりと、ベンチャー投資市場は活況です。

とはいえ、アメリカの同市場は約38兆円と日本の50倍の規模。日本もかなりのスピードで成長しているとはいえ、アメリカとはまだまだ彼我の差があるのが現状です。

ところで、⽇本(TOPIX)と⽶国(S&P)における直近10年間の株式市場のパフォーマンスの推移をみてみると、アメリカが大きく成長しているように見えます(下図参照)が、実は⽶国からGAFAMを除いてみると、日米には大きな差はないんです。つまり、アメリカの成長を牽引しているのはGAFAMのような近年新しく登場してきた会社ということです。日本においてもこういった会社を生み出していくことが、国力の増加に繋がると我々は考えています。

── なぜここまで日米の差が開いてしまったのでしょうか、言い換えれば、アメリカはGAFAMのような会社を生み出せ、日本はできていないのでしょうか。

まずは「投資家の多様性の課題」が挙げられるでしょう。国内スタートアップの大型ファイナンスはミドル・レイター期に集中しており、アーリー期への資金供給が不足しています。

FUNDINNO社はこの課題を解決すべく、国内初の株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を2017年にローンチしました。これは個人の投資家様(編注:以下、個人投資家を前提として話を伺います)が、直接、未上場のベンチャー企業に投資できるオンラインのプラットフォームです(現在は法人も投資可能)。2023年10月現在、FUNDINNOの累計成約額は100億円超、成約件数は300件超、登録ユーザー数は12万人を超えました。


プライマリー・セカンダリー市場でベンチャーの株式流通を後押し

── 他にも日本の課題はありますか?

日本のスタートアップ投資環境の2つ目の課題は、スタートアップ株は上場するまで売れない、つまりセカンダリーマーケット市場がほとんどないことです。創業から上場までの平均期間は12〜17年と言われています。これだけの長期間株式を売却できないとなると、二の足を踏んでしまう投資家様が多くなるのは当然です。

そこでFUNDINNO社は、非上場株式のセカンダリーマーケットである「FUNDINNO MARKET」を2021年にローンチしました。IPO・M&Aに代わる投資回収⽅法としてご利用いただいており、延べ参加者は1万人超、投資リターンでは最大10倍を超える案件も出てきました。


── FUNDINNOがプライマリーマーケット、FUNDINNO MARKETがセカンダリーマーケットということですね。

その通りです。しかしまだベンチャー投資に関する課題は残っています。現在のルールでは、株式投資型クラウドファンディングを利用するベンチャー企業様は年間1億円までしか調達できず、投資家様は1企業年間50万円までしか投資できません。ベンチャー企業様としては、より大きな資金調達を望まれるケースもあり、一方の投資家様はもっと高い金額を投資したいという方もいるという課題があったのです。

そこで、一定の知識や経験をお持ちのプロ投資家の方は、1社あたりの投資上限なくご投資いただける特定投資家制度ができました。これに伴い、IPO(株式上場)やM&Aなどが視野に⼊ったミドルからレイターステージのベンチャー企業に、個⼈/法人投資家様が数百万円から数億円までご投資ができる「FUNDINNO PLUS+」を2022年9月にローンチしました。

FUNDINNO社は他にも、スタートアップの成長を支援するFUNDOORなども運営しています。様々な面から未上場企業のエコシステムの循環サイクルを作り、リスクマネーの供給量を市場に増やし、日本のベンチャーマーケットをよりオープンに、民主的にしていきたいと考えています。それが結果的に、すべての起業家・投資家にとって情報機会の格差をなくして「フェアに挑戦できる、未来を創る」ことに繋がると考えています。


── FUNDINNOを使った投資において、個人投資家は「エンジェル税制」も使えるのでしょうか。

もちろん、エンジェル税制対象の案件ではご利用できます。エンジェル税制を簡単に説明すると、ベンチャー投資した金額を、総所得や他の株式譲渡益から控除し、所得税を軽減できる仕組みです。イメージとしてはふるさと納税が近いかもしれません。エンジェル税制優遇措置Aを使って、総所得1000万円の方が、年間300万円のエンジェル投資をすると約70万円所得税が軽減されるので、かなり大きなインパクトがあります。投資家様にとってメリットがある仕組みであり、エンジェル税制が投資の最後の一押しになるという側面もあるので、FUNDINNOとしては積極的に活用をお勧めしています。CSという意味でも、エンジェル投資の訴求はとても重要なものでもあります。


ベンチャー界の常識を個人投資家へ伝えることもCSの一環

── ちょうどCSという言葉も出てきたところで、そちらの話も聞かせてください。FUNDINNOにはどのようなCS業務があるのでしょうか。

FUNDINNOでのCSは、大きく4つに分けられます。

1つ目がオンボーディング。BtoCにオンボーディングという言葉を使うのは珍しいかもしれませんが、以下のような理由があります。FUNDINNOの投資家様は、これまでベンチャー投資をしたことがないという方がほとんどです。最低投資額でも10万円前後ということで、やはり最初の投資をしていただくには一定のハードルがあります。そのため、投資をするにはどうするのか、投資をすると何が起こるのか、どのくらい期待していいのかといった投資家様の疑問を解消しなければなりません。そういった意味で、BtoBサービスのオンボーディングのようなCSが必要になってきます。

2つ目が、案件マーケティング。FUNDINNOでは月に4〜7件程度の新しい投資案件が次々に登場します。その一件一件をどうやって投資家様に見ていただき、実際に投資していただくかというサポートをしています。

3つ目に、発行者様、つまり資金調達するベンチャー企業様と株主である投資家様のエンゲージメントを高める活動です。資金調達した企業はIR発信を継続的に実施していただきますが、それ以外にも、イベント活動などを発行社様とご一緒しながら、発行者様と投資家様の関係づくりの支援なども行なっています。

最後に、FUNDINNOと投資家様のエンゲージメント向上。投資家様には大きなお金を投資していただくことになるので、FUNDINNO自体への信頼がないと金融サービスとして活動できませんからね。

── CSの幅が非常に広いですね。株式投資型クラウドファンディング特有のCS業務はありますか?

我々が扱っているのはベンチャー投資について、例えば事業をピボットする会社もあります。しかし、上場株式投資をされている方々の感覚からすると、想定外の出来事になるかと思います。なので、ベンチャー企業の成長について、情報発信することも行なっています。

つまり、ベンチャー企業の常識をいかに一般投資家様にもご理解いただくかも、我々の大きなテーマの一つということです。そのために、例えば「教養としてのベンチャー投資」というYouTube番組を、CSが主導して立ち上げたりしています。

【教養としてのベンチャー投資】

── こういった活動もCSの仕事なんですね。

その通りです。ベンチャー投資のことを正しく知ってもらうということも、FUNDDINOではCSの範囲ですね。とはいえ、ピボットの話のように、いきなり事業が変わったら投資家様が驚くのも当然なので、ベンチャー企業様にも、経緯や理由を丁寧に、透明性をもって説明することを求めています。

── 動画だけでなく、過去に資金調達したベンチャー企業を記事にしてnoteで発信したりもしていますよね。

はい、これもCS業務の一環と言っていいでしょう。というのも、資金調達した会社のことを知りたいのはその会社の投資家様だけでなく、投資しなかった方もだからです。自分は投資しなかった会社が、その後どうなったかを知りたいという方はけっこうたくさんいらっしゃるんです。

またFUNDINNOにはベンチャー投資に興味のある投資家様が12万人いらっしゃいます。ベンチャー企業側にも、そういった方々に会社のことを知っていただけるのはいい機会だと、ベンチャー企業側にも喜んでいただいています。

情報発信もCS業務の一環

新設された「投資家サクセス部」の観点からKPIや報告事項を整理

── FUNDINNOのCS業務をアディッシュで支援させていただきました。ご依頼いただいた経緯を教えてください。

当時、FUNDINNO社に「投資家サクセス部」が新設されて、私が部門長に就任しました。とはいえ、私は広報・マーケティング畑の経験はあったものの、「投資家サクセス」そのものの経験はありません。会社としてもこういった切り口の組織は今までなかったので、ノウハウや知見も少なかったんです。

そのため、投資家サクセス部のKPIや指標をどうするのか、その達成のために何をすべきなのかといったこともすぐに決められませんでした。そうやって困っていたときに私の上長が、旧知のアディッシュを紹介してくれたんです。

FUNDDINOのサイトには数々の投資案件が並んでいる

最初は、投資家サクセスについてのコンサルティングをしていただきました。アディッシュさんは当然、色んな会社のCSを見てきているのでその知見を活かし、例えば経営陣にはどういった報告をすればいいのか、どういった指標をターゲットにすべきなのかという話を順番に整理していったんです。また色んなSaaSツールの活用方法なども相談しましたし、毎回テーマを決めて、個別具体的な相談をさせていただきました。

── 結果的に、何をKPIにしたのでしょうか。

複数ありますが、例えば「ウェブサイトアクティビティコンディション」です。FUNDINNOはその性質上「新しい案件が出た」「募集が開始された」「最終日」といったイベントがあるときに投資家様からの注目度が高まります。ウェブサイトアクティビティコンディションは、そういったときにちゃんと投資家様に情報が届いているかを確認するための指標です。これを継続的に見ていくと、案件や条件ごとに投資家様からのアテンションに強弱があることが判明しました。今はこれをみながら、投資家様にちゃんと情報を届けられるような施策を考えています。

こういったKPIや施策を報告するようになってから、経営陣からも「投資家様の状況が数字で把握できるようになった」と言われるようになりました。施策と数字の動きをちゃんと共有できるようになったのは大きな成果だと私も思っています。

コンサルティングに際しては、他社事例のお話をたくさん聞けたのも助かりました。投資家サクセスはどちらかというと中長期的な課題解決を考えることが多いのですが、それ故にやることも多く、優先順位の付け方に迷っていたんです。その点アディッシュさんは、これまで数多くのCS事例に携わってきた経験と知見があるので、「こういう理由でここの優先順位は上げましょう」「ここは割り切って後回しにしましょう」と色んなアドバイスやヒントをくれたので、これが非常に役立ちました。

もちろんウェブを検索すれば色々な情報は出てきます。ただその中から、生きた他社事例を選別し、ちゃんと使えるまでに昇華するのは簡単ではありません。「こういう状況ではこういうオンボーディングをしている」「その場合、時間やコストはこういうところがある」「こういった落とし穴がある」といった具合に具体策を教えていただくに留まらず、報告フォーマットまで相談させてもらいました。こう話しているとCS支援というより個人コーチングみたいですね(笑)

その他にも、メルマガ作成担当のスタッフが退職した際にはメルマガの作成に対応いただく方を、緊急でアサインしていただいたりと、手を動かすところでもアディッシュさんにはお手伝いいただいています。

── ありがとうございます。アディッシュの評価はいかがでしょうか。

先述したように、具体的な指標や施策に取り組めるようになったのはもちろん助かりました。ただ、それ以上に投資家サクセス部の立ち上げに際して、私の「心の支え」になっていただいたのが、最も嬉しかったかもしれません。担当者の方々にはいいことも悪いこともお話させていただきましたし、投資家サクセスについて遠慮なくコミュニケーションをとれる場があったというのは、非常に助かりました。

── お褒めの言葉をいただき恐縮至極です。今後もアディッシュにFUNDINNO社のお手伝いをさせてください。本日はありがとうございました。

※記事中の画像はすべてFUNDINNO様の提供です。
(取材協力:pilot boat)



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