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ビジネスを理解していないとできないCSに感動した。回送車両を使った片道レンタカー「カタレン」へのCSサポート事例【Pathfinder株式会社】

Pathfinder株式会社(以下「Pathfinder」)さまは、回送車両を利用した片道専用レンタカーサービス「カタレン」を運営するスタートアップです。同社は急激に増加する利用者に、カスタマーサクセス(以下「CS」)人員の採用が追いついていませんでした。そこでCS業務のアディッシュへの外部委託を決断。業務の滞りが解消されただけでなく「マニュアルプラスアルファまで対応してもらっている」と評価いただいています。

Pathfinderのビジネスモデル上、どのようなCS業務が発生し、どんな苦労があったのか。アディッシュに委託することでそれはどう解決されたのか。同社でCS業務を所管する横井大輔さんに伺いました。


ENEOSから出向。理由は「0→1に携わりたかった」から

── 横井さんの担当業務と、経歴を教えてください。

Pathfinderでオペレーションマネージャーを担当している横井です。弊社が運営するカタレンは、端的に表現すると「片道専用のレンタカー」です。その中で私はレンタカーのオペレーションのあらゆる場面に関わっています。例えば、予約やその承認、車や駐車場といった設備投資、お問い合わせ対応などです。

Pathfinder株式会社 オペレーションマネージャー/事業開発担当 横井 大輔 さん
(画像提供:Pathfinder)

実は私はENEOS株式会社(以下「ENEOS」)の社員でして、「レンタル移籍」というベンチャー(への)研修派遣制度を使って、現在Pathfinderで働いています。

── それは珍しいですね! どういった経緯でPathfinderに派遣されたのでしょうか。

Pathfinderに来る前、私はENEOSの和歌山製油所で、プラントエンジニア・メカニカルエンジニアとして働いていました。とはいえ社内新規事業の提案もするなど、新規事業活動にも興味があったんです。そんなときにちょうどこの研修があるということで、手を上げました。

幸いにも研修に参加できることになったので、どこのスタートアップに行くか検討するわけですが、渡された候補リストには400社も掲載されていて(笑)。選択肢が多いのは嬉しいのですが、さすがに多くてどうしたものかと。

それで選ぶ際の軸を決めました。「従業員が少ない、アーリーステージのスタートアップ」です。

なぜこれだったかというと、0→1に携わりたかったからです。前述のように私はプラントエンジニアでしたが、それを活かして研修先を探すと、エンジニアとして雇われて、前の仕事と変わらない狭い領域の仕事しかできないのではないかと危惧しました。職種を変えるという意味でも、人が少ない会社に行けば広範囲な仕事を任せてもらえるのではないかと思ったんです。

また私はバックパッカーで、旅行が好きなんです。海外で車を借りてあちこちを回ることも好きで、そういった興味関心なども考慮して、400社からPathfinder社を選びました。

── Pathfinderで実際に働いてみて、希望は叶いましたか?

私が入社した当時、Pathfinderはフルタイムで働いているのは社長の小野﨑1人でした。なので「従業員が少ない、アーリーステージのスタートアップ」で働くという希望は叶いましたし、0→1にも携われて満足しています。

とはいえ、最初は大変でした。いざ業務に取り掛かろうとしても、何をやっていいかわからなかったんです。正確に言うと、やるべきことはたくさんあるのに、リソースが少なすぎてどこから手を付けていいかわからなかった。何をやってもプラスになりそうというか、例えばホームページの言葉を1つ直しただけでも売上が上がるような状態でした(笑)。

ただ、ホームページを改修するよりは車両や路線を増やしたりするほうが、本質的な売上拡大に繋がるのは明白です。それで最初は路線数を増やすことにしました。私が入社した当時は4路線しかなかったものが、2023年10月現在は17路線まで増えています。路線が1つ増えるだけで売上がすごく増えるという経験は正に私が望んだもので、今の仕事は本当に楽しいですね。

回送車両を使って、レンタカーの負を解決

── チャレンジ精神あふれる素敵なお話ですね。それでは改めて「カタレン」について教えてください。

免許保有者のうち、レンタカーを使った経験のある方は72%と相当数がいるのですが、レンタカーを片道乗り捨てで使ったことがある方は10%程度と、かなり少ないんです(Pathfinder調べ)。なぜかというと、単純に「片道だと高いから」。

例えばレンタカーを借りて東京-大阪間を往復して東京で返却すると、レンタル料の相場は1泊2日で1万円程度です。しかし東京から大阪まで運転し大阪でレンタカーを乗り捨てると、4万円ほどかかります。不思議ですよね。その理由は、レンタカー会社が大阪から東京にレンタカーを回送させるためのコストとして乗り捨て料金が追加で3万円かかるからです。合計4万円もかかるとなると、さすがにレンタカーを借りる人はほとんどいなくなるため、先述したような結果になるというわけです。

そこでPathfinderは、この回送車両を使った片道レンタカー「カタレン」を提供することにしました。お客さまに回送車両を回収してもらうことにより乗り捨て(料金)という概念がなくなり、片道1万円程度でレンタカーが借りられるようになる、というわけです。

(画像提供:Pathfinder)

カタレンのビジネスモデルをもうちょっと詳しく説明しましょう。本来は東京に置いておきたいレンタカーが大阪で乗り捨てられたら、レンタカー会社が「大阪から東京に車両を回送してほしい」とカタレンに依頼を出します。後は通常のレンタカー業務と同じで、大阪から東京へ行きたいという方にレンタカーを貸すだけです。仕組み上「回送車両」と表現していますが、利用者からみれば、通常のレンタカーと特に違いはありません。またレンタカー会社からすれば、本来回収にかかっていた3万円のコストがかからず、むしろ収益を生み出せます。利用者からいただいた代金はカタレンとレンタカー会社でシェアする。そういったビジネスモデルです。なお、上記では便宜上レンタカーから依頼という説明をしましたが、Pathfinderの自社車両も用意しています。

(画像提供:Pathfinder)

2023年現在では、東京-成田、東京-京都、東京-名古屋、東京-大阪、大阪-名古屋、福岡-鹿児島-長崎、函館-千歳空港など、17路線を用意しています。ユーザー数も路線も順調に増加していて、CS部分に手が回らなくなってきたので、後述するようにアディッシュさんにCSを手伝ってもらうようになりました。

ちょっと尖ったサービスということもあって、当初は新しいものが好きなアーリーアダプター、具体的には20〜30代の方がユーザーのほとんどでしたが、最近は年配の方や家族連れの方も増えてきています。

── 乗り捨てによるレンタカーの偏在を解消するサービスとなっているのですね。とはいっても、うまくユーザーが現れずに、五反田から成田に車を回送できないといった事態も起きてしまうのではないでしょうか。

そうなんです。そういった事態の解消を語る上で欠かせない存在となっているのが、カタレンのユーザーコミュニティです。

例えば、五反田→成田の予約が入っていたけれど、急遽キャンセルになってしまうといったことはどうしても発生してしまいます。しかもその後には成田→五反田の予約が入っていたら大変です。今五反田にある車を成田に運ばなくてはなりませんからね。

Pathfinderの社員が対応できればいいのですが、対応した社員は数時間仕事ができません。こんなときには「回送サポーター」に車両の回送をお願いして、五反田から成田まで車を運んでもらうんです。

── サポーターの方が車を運転して運んでくれるんですね。サポーターはどういった目的で活動しているのでしょうか。

もちろんインセンティブとして料金の割引を提供しているのですが、それが目的というよりは、単にドライブが好きという方が多いですね。むしろ「趣味で車を運転しているだけなのに、割引もしてもらえてラッキー」と感じている方も少なくないようです(笑)。「路線なんてどこでもいいから、運転したいです」という方もいらっしゃって、こういったサポーターにはかなり助けられています。

LINE対応を中心にCSをアディッシュに委託、+αの対応に感動も

── そんなカタレンは、現在急激に利用者数を伸ばしていることもあって、CSの委託を検討していたと伺っています。

数ヶ月前まではCSも内製していました。ですが業務委託の割合が多く正社員が少ないこともあって、お問い合わせに対応するのに時間がかかってしまうという課題があったんです。

人が待機していればすぐに対応できるものの、シフトを組んでも隙間が出てしまうような状況で、問い合わせにタイムリーに対応できないという状態に陥っていました。可能なら私が対応していましたが、深夜に出発する際にアクシデントが起きるお客さまもいるので、さすがに限界はあります(笑)。

それならばCS人員を採用すればいいのですが、ユーザー数の急激な増加に耐えうるほどの採用を続けるのも大変でした。つまり、ユーザー数の増加に採用のスピードが追いつかないんです。このような状況に鑑みて、CSを社内で対応し続けるのは不可能だと判断しました。それでアディッシュさんにCSを委託しようと考えたんです。

── ありがとうございます。アディッシュに委託する前に他社との比較検討はされましたか?

他にも2社から提案いただいたのですが、その中でも対応いただける業務の割にリーズナブルだったので、アディッシュさんに決めました。特に、想像以上に色々なことに対応していただけそうな点が嬉しかったです。

例えば、スプレッドシートで対応していたある業務の説明をしていたとき、「ここは関数を使って効率化してしまって大丈夫ですか」「他の業務にも対応するために、こう変えてしまって大丈夫ですか」と逆リクエストをいくつかいただいたんです。単に作業を代替するだけでなく、付加価値も出していただけそうな気配がありました。一緒に事業を拡大していくパートナーとして、いい関係を築けそうだと感じた瞬間でしたね。

── ありがとうございます。アディッシュに委託をお任せいただいたのはどんな業務でしょうか。

大きく2つあります。1つは「問い合わせ対応」です。電話はコールセンターと別途契約しているので対象外なのですが、カタレンのメインの問い合わせ方法であるLINEへの対応は、アディッシュさんにお願いしています。

問い合わせで多いのは、予約時間の変更や、路線リクエストです。予約リクエストを承れないときに「何時なら使えますか」といった問い合わせに回答したり、「駐車場の場所がわからない」といったものにも対応いただいています。

── 予約リクエストは自動で承認されるのではないのですね。

そうなんです。この予約を承認するか否かの判断は、非常に複雑なんです。

大阪-東京間の予約を例にとりましょう。例えば今車が大阪にあるとして、1ヵ月後に東京→大阪間の予約リクエストが入ったとしたら、さすがにそれまでには大阪→東京間を使うお客さまがいるので、東京→大阪間の予約は承認していいと考えられます。ですが仮に1ヵ月後ではなく、2日後だったらどうでしょう。今車は大阪にあるけど、2日後に東京→大阪間で使いたいという方がいる。それまでに大阪→東京のお客さまがいらっしゃれば問題ないですが、もしいらっしゃらなかったら予約は受けてはいけないことになる。こういった問題があちこちで発生することが、カタレンの難しさです。

── それは確かに大変そうです。Pathfinder社で「こういった場合は予約リクエストを受けていい/受けてはいけない」というマニュアルを整備しているかと思いますが、アディッシュではどのように対応すればいいでしょうか。

現在はかなりの安全マージンをもった日数があったら予約を受けてOKというマニュアルを用意し、運用していただいています。ただ当然、カタレンとしては車の稼働率は上げたいので、このマニュアルは順次改定しているんです。アディッシュさんにはそれに柔軟に対応いただいているので助かっています。

むしろ先日はこんなことがありました。お客さまから予約リクエストがあったのですが、前の予定との時間のマージンがなくて、マニュアル通りだったら予約は受けられなかったんです。弊社としてはその対応で問題なかったのですが、アディッシュさんが「お客さまからのリクエストを2時間ずらしたら受けられると思うので、ずらしても大丈夫ですか」とわざわざコミュニケーションをとってくれたときには「マジか!」と思い感動しました。マニュアルだけでなく、弊社のビジネスそのものを理解しないとこの提案はできません。

ここまで対応してほしいとはさすがにマニュアルにも書いていませんし、むしろこんなことまで対応するのは面倒ですらあるはずです。我々の売上に繋がるプラスアルファの行動をとってくださったのには感謝しています。

── ありがとうございます……! とはいえ、アディッシュ側で回答してほしいけど、まだできていないようなものもあるのではないでしょうか。

もちろん珍しい質問などはありますが、アディッシュさんはかなりの問い合わせに回答していただいているので、ほとんどないはずですよ。

── よかったです(笑)。

現在は9時〜18時の時間の問い合わせをお任せいただいていますが、それ以外の時間もカタレンを利用する方はいらっしゃいますよね。

はい、サービス柄、深夜に車で移動されるお客さまも多いですからね。今は売上規模やコスト感に鑑みて、9〜18時が最適かと考えていますが、売上が上がり規模が拡大したらいずれ24時間でお願いする可能性も十分にあります。

目指すは自動運転時代のプラットフォーム

── 最後に、カタレンまたはPathfinder社としての中長期的な展望を教えてください。

Pathfinderは足元では片道レンタカー業として長距離の回送マッチングであるカタレンを運営してきました。しかし長期的には、完全自動運転社会が訪れた際に最適配置プラットフォームを提供したいと考えています。つまり短距離だろうが長距離だろうが、ユーザーがモビリティに乗りたいと思ったときに、そこにモビリティがあるような未来を作りたいんです。

そのためには、ユーザーの乗客予想というアルゴリズムを構築しないといけません。しかしそれは相当複雑なもので、特に短距離だと雨が降っただけでもユーザーの行動は変わるでしょうし、渋滞、時間帯、季節、気温、イベントなど無数の変数を考慮しなくてはならないとなると、非常に高い難易度となります。

そこでまずは変数の少ない長距離を足元の事業とし、ゆくゆくは短距離に進出、最終的に完全自動運転社会のプラットフォームを作るといった構想を我々は描いています。長距離で培ったデータを短距離に、そしてプラットフォームに利用して、需要予測や最適配置のアルゴリズムを作っていきたいですね。

── 壮大なテーマですね。アディッシュにもPathfinderさまの未来を作るお手伝いをさせてください。横井さん、本日はありがとうございました!

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